社長メッセージ
感動を、次の感動へ
初めて観た映画は、チャップリンの『キッド』でした。
そして、生まれて初めて涙したのも、この『キッド』にほかなりません。
時が流れ、黒澤明監督の『用心棒』と出合ったとき、私は「面白くて、美しい」——言葉にできない感動に打たれました。
あの感動をもう一度味わいたくて、次々と映画を観る旅へ。
流行りの言葉に言い換えれば、映画に”沼る”日々の始まりでした。
とりわけ、1987年、『マルサの女』との出合いは衝撃的で、一日に3回連続で観たあの日のことは、今も鮮明に覚えています。
市川森一、倉本聰、早坂暁、向田邦子、山田太一…※
テレビドラマの黄金時代をけん引した作家の作品に何度も心を動かされるうちに、気づけば「観る側」から「つくる側」として社会人の第一歩を踏み出したのは、ある意味必然だったのかもしれません。
その流れは脈々と受け継がれ、大森寿美男、宮藤官九郎、古沢良太、坂元裕二、中園ミホ、野木亜紀子、三谷幸喜…※といった次代を担う作家たちの作品に触発された若手スタッフが参集してくれるようになりました。
こうして「感動の恩返し」が、私の仕事そのものになっていきました。
『日本映画専門チャンネル』『時代劇専門チャンネル』は、
先輩たちが遺してくれた“感動の集合体”で成り立っています。
まず時代劇ですが、中村吉右衛門主演『鬼平犯科帳』が体現した時代劇の普遍性と無限の可能性は、松本幸四郎主演の新たな『鬼平犯科帳』へと受け継がれています。
映画俳優・高倉健さんの佇まいは、北大路欣也さんへと受け継がれ、主演作『三屋清左衛門残日録』は2025年で第9作目を数える、大ヒットシリーズとなりました。
劇場映画では、テレビドラマ『おいハンサム!!』が、熱烈なコアファンのみなさまにご支持いただきスクリーンへと発展しました。脚本・監督を務めた山口雅俊さんは、企画書でこう記しています——向田邦子『寺内貫太郎一家』、伊丹十三『タンポポ』に『サザエさん』を足して、それぞれのエッセンスを凝縮したような作品。
このように“名作へのリスペクト”を大切にしているからこそ、往年の名作や原作のファンのみなさまにご支持いただきながら、新たなファンも開拓するという「感動の恩返し」に繋げられるのです。
そして今、私たちは国内だけでなく、海外向け配信サービス「24/7
SAMURAI-SHINOBI」を通じて、日本の時代劇の魅力を世界へと発信しています。
「感動」は、映画やドラマだけでなく、「人との出会い」や「ご縁」にも宿るもの。
スタッフやキャストと共に作品をつくる喜び、名作を発掘しお客様に届ける喜び。
お客様をとことん楽しませ、感動を継承する。
それが、私たちの仕事であり、使命です。
※五十音順、敬称略
プロフィール
1967年生まれ、東京都出身。
1998年「日本映画専門チャンネル」「時代劇専門チャンネル」の開局から編成、企画を担当。時代劇専門チャンネルのオリジナル時代劇、35作品以上の企画、プロデューサーを務める。主な劇場映画として「最後の忠臣蔵」(監督:杉田成道)、「LIAR
GAME The Final
Stage」(監督:松山博昭)、「リップヴァンウィンクルの花嫁」(監督:岩井俊二)、「Ribbon」(監督:のん)、「仕掛人・藤枝梅安㊀㊁」(監督:河毛俊作)、同作品で2023年、第42回藤本賞新人賞を受賞。
松本幸四郎主演「鬼平犯科帳」シリーズ(監督:山下智彦)、「おいハンサム‼」(監督:山口雅俊)連続シリーズ&劇場版のエグゼクティブ・プロデューサー。2025年「伊丹十三4K映画祭」、アクション時代劇「SHOGUN'S
NINJA」(監督:坂本浩一)企画。
2022年常務執行役員、2025年6月代表取締役社長に就任。